うまいものJAPAN UMAIMONO JAPAN
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うまいものJAPAN ///////////////////////////////////////////

   「うまいもの便り」 2007年8月

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 梅雨明けが遅れた今年の夏です。 
やっと梅雨明け宣言が出たと思ったら、
夜半に豪雨に見舞われるという皮肉な事態になりました。

 今年、気象庁は「猛暑日」という新語を発表し、
最高気温が35度以上の日を猛暑日とするようです。
暑いけれど、暑さは短い夏だとも云われています。
今年の夏は、「猛暑日」が何日あるか、当てっこしようと思っています。
猛暑日が少ない方がいいに決まっています。
けれど、あまり短いのも、ちょっぴり淋しいなどと複雑な気分です。

 皆さま、どうぞ、それぞれの良い夏をお過ごし下さいますように。

   うまいものJAPAN うまいもの探究人 鈴木延枝


■■8月のお薦め
■心も体もスッキリ!!美味しい『お水』と『お茶』

 晴れると陽射しが眩しい≠ニいうより、痛い°G節になってきました。
この季節には、やっぱり冷たい飲み物が欲しくなります。
熱中症予防のためにも、大事なのが水分補給。同じ飲むなら、美味しいものを・・・。

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■■うまいものとの出会い Vol.44

 ― 蓬莱橋とそば ―

関東に台風4号が襲来する前の日のことであった。
小雨のけむる空の下、車は東名高速道路を静岡方向へ滑るように走り続けた。
吉田インターで降り、5分足らずで、目的の店は見つかった。

 その日のメンバーは、そば好きの幼な友達。
二ヶ月に一度位の割合で、車で日帰りできる位の距離の名店、
話題のそば店を探訪する。
男性2人、女性2人の4人組で、丁度、車一台でゆったりと行ける人数だ。
我々の「旨そば探検」は、始めて5年程になる。
何より、同年代、小学校か中学校からの仲良しだから、気がおけない。
あまり、講釈は抜きで旨いそば屋を訪ね、ドライブを楽しむ。

地方や郊外の店を訪ねるのは、味だけではない何かがあるからだ。
それは、訪ねる道程の楽しみ、店の周りを取り囲む環境、
地方色のある店構えなどである。
居心地の良い空間は、そばの味を盛り上げてくれるからだ。

 さて、店は見つかったが、案外、車の流れがスムーズで
予想外に早く、11時に着いてしまった。
開店は11時半、しばらく、どこかで時間潰しをしようということになった。
友人の一人から「ならば、近くにいい所があるよ」という提案が出た。
グッドアイデアだと早速実行。
しばらく走ると、ギネスにも認定されている
世界一長い木造の橋「蓬莱橋」に到達した。
江戸時代に、島田側から、お茶で有名な牧の原側へと渡された
全長897mの木造の長〜い橋、ふと下を見ると、瀬音高く流れる大井川。
幾度となく、水害にあって流されている。
吊り橋ではないから、恐くはない。
橋板も隙間なく張られているから、歩きやすい。
けれど、往復は、かなりきついと思った。
ここは、時代劇のロケ地にもなっているので、
観光スポットでもある。観光客も多い。
傘をさして、足早にスタスタと渡って行くのは、地元の方なのだろう。

 この橋は、日暮れてからか、冬景色が似合うだろう。
今はただ、だんだん高くなってくる水かさと、
流れの早さに、気を奪われるばかりだった。
時間も迫り、又、もと来た道を戻る。

 その店は島田市の「藪蕎麦・宮本」という。
店の前には、駐車のスペースがとってあり、
車で走ると、つい見逃しそうになる。
古い民家を改装したもののようだ。
玄関を入ると、広いたたきがあり、二間続きの畳の部屋が食堂になっている。
むき出しの梁、黒ずんだ太い柱、
アンティークの水屋箪笥が、どっしりと収まっている。

そば屋の歴史は、江戸時代からと割合、新しい。
もともと、名古屋から西はうどん文化圏≠セったが、
今では、関西から北海道まで全国的に普及している。

そもそも、日本そばの名店というのは、砂場=A更科=A藪≠ェ
三大老舗だが、今では、もう少しこだわった、いくつかの系列がある。
竹やぶ系=Aだるま系=A一茶庵系≠ネどである。

そこで修業した人たちが全国に散らばって行く。
例えば、「達磨」は、有名なそば職人、高橋邦弘さんの店の屋号。
前身は「翁」で、多くのお弟子さんを育て、
彼らが全国各地に、その味と技を継ぐ店を続々と出店している。
宮本もそんな店の一つである。

宮本では、席に着くと先ず水が出てくる。
「おや?お茶ではないのか・・・?」と、一瞬思うのだが、水なのだ。
銘店と云われる程の店だから、訳があるに違いない。
冷たくて旨い!そうだ、この辺りは富士山の伏流水が涌いている。
美味しいそばは、やはり水にこだわっているのだ。
そして、旨いそばを食べてもらう前に、口の中をきれいにし、
他の味を、喉に残して欲しくないのかもしれない。

ここのそばは、全て国産、自家製粉の手打ちだ。
田舎そばは、手挽きで、毎日石臼で挽くのだという。

我々仲間は、さすがに皆、巧みにそばを手繰る。
盛りそばは、一杯700円、しかし上品な小盛りで、
男性軍は一人4杯という食べっぷりであった。
量は少ないが、そばは淡白なもの、
美味しくなければ、そうそうお代わりはしない。

「盛り」には、「普通」のものと「田舎」がある。
藪系では、ざるは「ざる一枚を三口半で、二枚食べるのが江戸前のそばの食べ方」
と、云われてきた。私も各々、一枚ずつ二枚いただいた。
特に田舎は細打ちで、よく見るとほんの少し、小さなホシが見える。
コシがあり、細打ちならではの喉越しの良さに、全員揃って満足していた。
しかし、田舎そばは、山形の「あらき」が一番というような、
顎がくたびれてしまうように堅く、太いそばが好きな人には物足りないかもしれない。

私は、一枚は天せいろにしたのだが、ここの天ぷらはかき揚げ。
それは、薄い衣で海老を包むようにして揚げてあるので、
天ぷらと、汁と、そばが旨く、絡み合うからだという。
そして、わさびも、生わさびを使い、
「わさびは汁の中に溶かし入れず、そばの上に塗ってから、
そば汁につけるように」という。まるで魚の刺身を食べるように。
その方が、そばとわさびの素朴な味が活きるからという理由からだ。

 もう一つ、気に入った点は、そば汁に辛口と甘口があることだ。
丁度、この辺りが日本列島を東西に分ける、味覚の交差点である。
多分、関東以北のお客様には、汁の味が甘く感じられるかもしれない
という、配慮である。
私は勿論、辛口の方を注文したが、甘口も、ちょっと味見をさせてもらったが、
さほど甘いとは思わぬ良い味であった。

 翌日、朝のニュースを見て驚天した。
ものすごい雨台風で、蓬莱橋の1/3が崩壊されてしまったとのこと。
もう少し遅かったら、見れなかったかもしれない。
危ないことになっていたかもしれない。
人生の明暗は、ほんの少しの時間差によって分かれてしまう。

宮本のそばの味は、橋の想い出と共に、いつまでも忘れないものになるだろう。 

 
  平成19年 葉月 鈴木延枝 記

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